─老後を賢く生きるためのマネー講座1─
【シニア世代からのライフプランが重要】
日本人の平均寿命は年々延び、令和2年では男性で81.64歳、女性で87.74歳。さらに女性の2人に1人、男性でも4人に1人が90歳まで生きています。今後その割合はさらに高くなるでしょう。
そこで気になるのが、老後の生活。収入の主たるものは公的年金です。特に贅沢をしなければ、老後は食費、交際費も減って、現役時代より少ない額で公的年金だけで生活できると思っている方もいるかもしれませんが、果たしてどうでしょうか。
◆人生100年時代、老後支出が増え、年金収入が減る。老後は一世代前のようにはいかない
厚生労働省が発表した令和元年の老齢基礎年金(国民年金)平均受給額(月額)は56,049円。サラリーマンなど厚生年金被保険者に支給される老齢厚生年金平均受給額(月額)は146,162円です。令和2年の「家計調査報告(家計収支編)」によれば、世帯主65歳以上の2人以上世帯(無職世帯)では1カ月平均230,514円の消費支出が発生しています。自営業やフリーランスなど国民年金にしか加入できない方々は、年金だけで生活することは出来ません。年金支給開始年齢が65歳に引き上げられましたが、将来的にはさらに引き上げられることもあるかもしれません。また、本来年金額は物価の上昇に応じて引き上げられるものですが、引き上げ幅を抑制・調整するマクロ経済スライドが実施されることで、給付水準が抑制されることが考えられます。さらに、少子高齢化がさらに進むなか、急速に物価高が進んでいることも考慮しなければなりません。また消費税が増税されることも織り込んでおく必要があるでしょう。その上、医療・介護については、団塊の世代が70歳を迎え、大幅に膨れ上がるなか、健康保険料・介護保険料や医療・介護負担割合が増え、そして自身の加齢による医療費・介護
費のアップが見込まれるため、将来の老後支出は現在と比べじわじわ増え続けることは避けられないでしょう。
人生100年時代、老後支出が増え、年金収入が減る。老後は一世代前のようにはいかないのが現実です。
◆老後収支を改善するには、専門家の存在が欠かせない
では、老後を安心して暮らすために、老後収支を改善するには何をしたらいいでしょう。やるべきことは①収入を増やす、②支出を減らす、③貯める・資産を活用すること考えられます。①収入を増やすには、1.働くこと、2.任意加入制度、付加年金、繰下げ受給などで公的年金を増額することが考えられます。③の貯める・資産を活用するには、これまで投資や運用等に十分な知識の無い方が、「資産を活用する」と言っても、行動を起こすことに二の足を踏んでしまうのは当然のこと。将来の支出へ備えて投資を始めてみたいけど、何から始めたらいいかわからないのが実情でしょう。
そんな時に相談相手として頭に浮かぶのは、銀行、証券会社、FPプランナー、税理士や会計士などのお金のプロ達ではないでしょうか。この中で、今注目さているのがFPプランナーに相談するスタイル(顧問契約を含む)です。その理由として、家計のマネープランは、各家庭の収支や資産状況によってまちまちだからです。例えば株式や債券投資で資産運用すると決めていれば、銀行や証券会社に相談は出来ますが、各社は自社の利益を優先して様々な商品を勧めてきます。その家庭にとって果たして証券や債権を購入するのがベターな選択なのかも分かりません。一方で、FPプランナーは金融商品の勧誘・売買をせずに家庭にとっての最善のアドバイスをすることが仕事です。家庭のおかれた状況や考えによって課題の解決方法は異なるはずで、場合によっては、金融商品を購入せずとも支出の見直しだけでお金の問題を解決できるかも知れません。金融商品の勧誘・販売を行わないFPプランナーだからこそ実現できる、中立的かつ専門的なアドバイスを提供してくれることが、FP活用の最大のメリットなのです。この紙面講座で講師を務めて頂く井上昇氏は、日経新聞やラジオ番組に出演することでも知られるFP歴20年のベテランプランナー。メガバンクで培った長年の経験と、FPプランナーとしての膨大な情報の蓄積と問題解決力で、様々な難題にも応えてきた専門家です。
「私たちは現在から老後まで長期間にわたって豊かに生活していくためにはどのようにしたらいいだろうという提案をするのが仕事です。もちろん、提案するだけでなく、ご一緒に解決してそれを実践していくというスタンスです。面談をして「こうしたほうがいいです」とご指導することもありますが、ファイナンシャルプランナーの根本は、お客さまのそばについて一生伴走していくという仕事なのです。銀行、証券会社、不動産会社等の各社単独では提供できない専門的なアドバイスを、ワンストップで提供しています。ゴールはお客様に必要な“自分だけの”プランや手段を見つけ、理想の未来を実現すること。一人ひとり異なるお悩みにしっかりと寄り添い、実効性のある丁寧なプランニングとアドバイスを提供しています」と井上氏。
人生100年時代だからこそ、従来のような「老後」という考え方ではなく、もう一度やりたいこと(シニア起業、趣味、社会貢献等)に挑戦するという、将来を楽しむための老後のライフプランを計画してみてはどうでしょうか。60代で定年退職した後、第二の人生を充実した生活に出来るか否かは本人の行動次第なのです。次号に続く。
筆者 :
井上 昇(いのうえ のぼる)(ファイナンシャル・プランナー)
■プロフィール
CFP®(日本FP協会認定)
横浜国立大学経済学部卒業。
国内大手銀行を経て、ファイナンシャル・プランナーとして独立。
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